気持ちいい生活(お風呂編)
宿でほっとひと息。海外のお風呂場は、くつろぎの「部屋」って感じ?


現在、私が暮らす栃木県は温泉の宝庫。各自治体で温泉施設をもっている(ところが多い)ので、リーズナブルな価格で気軽に利用することができる。特に外回り仕事の合間、「時間調整」がどうしても必要になったときは、温泉施設を利用するなんてザラだったり(笑)。日本古来の文化だねぇ、風呂というのは。(←しみじみ思う)

風呂という場所は、私の中で占める割合は意外と大きい。それはひとりになれるからだ。湯船につかって考えをまとめたり、気を落ち着けたりするにはもってこいの場所なのだ。風呂好きと言われればそうかもしれないけれど、決してきれい好きじゃない。ちょっと気合を入れたいときは、昼間からバスタブに熱いお湯を張ってゆっくり肩までつかる。私にとって、これはちょっとした儀式かもね。

私は昔、内風呂がなかった古い家に住んでいた。夏はいいのだけれど、冬はものすごく寒かった。脱衣所の蛇口が凍結しないように、夜は細く水を出したまま眠るのだけど、朝になるとやはり凍っていた。蛇口から水が出る形で凍っているばかりか、洗面台の内側には水滴がはねたままに凍っている。そういう場所で服を脱ぐものだから、そりゃーほとんど拷問だった(笑)。このころは風呂場では本当に体を洗うだけの場所だった。それからひとり暮らしをするようになって、そのうちマンションのお風呂というものを知った。さすがにうちよりあったかくて、湯船でボーッと過ごすのが好きになった。

このころはちょうど、ホテルの風呂(バスルーム)というものを知り、生まれて初めて洋式バスに入った。洗い場がないということにちょっと抵抗を感じたけれど、慣れてしまえば大丈夫。湯船がないところもたくさんあったけど、旅先でもやはりお風呂場はホッとする。 そして、海外での風呂・バスルームを体験。このころの私は、ちょっとした海外ブームで、3~4日スケジュールが空けば、近場の海外で完全オフを決め込んでいた。行ったところ、泊まった場所は決して多くはないけれど、ホテルや旅館(安宿含む)を利用しているうちに、海外でのお風呂のあり方って、何か違う。私が知っている日本のものとは違うみたいと感じるようになっていた。

海外で泊まった宿の中には、実は娼婦の館でした!という驚きの展開が待っていたところもあったけど(笑)、バスルームの中にトイレがあったり(いわゆるユニットバス)する上に、トイレットペーパーのストックが普通に置いてあったり、レースのカーテンや椅子まであったところもある。マガジンラックも置いてあって、「湿気はこもらないのだろうか?」と素朴な疑問をずっと持っていた。たぶん、湿度が低いんだろうな。いや、洗い場がない分、乾きやすいのかもしれないなと。

あれこれ疑問を抱きつつ、仕事では許されれば、これも勉強と思って差額分を自腹切って、ホテルの部屋やグレードを上げてみたこともあった。おお、広いバスルームに、なんと籐のテーブルセットがあるではないか。床がじゅうたん敷きで、その一角が高くなってバスタブになっているところもあったなぁ。あまりの居心地のよさに、3時間ぐらいバスルームから出てこなかったこともありました(笑)。

これらは「ホテル」という、まれに見る湿度の低い環境(たしか20%くらい)だから実現できることだけど、それだけじゃないような気がした。お風呂も部屋の1つとして考えているのではなかろうか? 独立した1つのお部屋として、もちろんお風呂としての機能が大切だけれど、それに加えて、部屋としてくつろげなくてはならない。そういう意図というか気持ちが、ひしひしと伝わってくるような気がしてきた。

実は私、温泉、特に日本の露天風呂が大好きだ。星や山、海を見てボーッとして、畳の部屋に戻ってビールを飲む。コレが最高に好きだったりする。でも、今の家や仕事場は、物件やスペース、その他諸々の事情と関係で、なかなか思うようにくつろげるバスルームをめざす時間がかけられない。

そんなわけで、現在は小物を使っていろいろ試している。温泉の素だけでなく、アロマオイルを湯船に垂らしてみたり、キャンドルを持ち込んだりしてみたり。くつろぎの空間を目指してはいたのだけれど、もっぱら最近は「考え事」をする部屋と化している。たまに湯船で気を失う(寝てしまう)こともあるから要注意だけど(笑)。

男のくせに、風呂が長いのはそのせいなのです。

<2003年5月掲載>