血圧計を持ち歩く旅人に…
だけど、実際のところ、「病気持ち」はどこまで旅が出来るのだろう?


私は昨年の夏に、病気治療のために会社勤めを辞めた。入院治療が必要と医者から言われたからだ。病院のベットが空くまでという話で、通院治療で渡すことができる最大量の薬を飲み続けて待つことに。ところがそれらを服用し始めると、予想以上に薬の効果があったらしく、問答無用で即入院という話は消えてなくなり、現在は週2回の病院通いで自宅療養中。でも風邪をひいたら即入院って言われましたけど。

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最近はよく国内旅行に出掛ける。週2回の病院通いがレギュラーとなってしまい、今の状態では2~3日間の旅行しかできないのだ。しばらくの間、毎日が日曜日みたいな生活をしているのに、外に出られなくてブルーが続いた日もあった。病気であることは仕方がないことだけれども、何でもあきらめてしまうのは悔しすぎる。病状が一時的に安定し、医者から「外に出てもいいよ」と言われたとき、あらゆる条件の中で可能な限り、何でもやってみようと思った。もちろん旅行もその1つ。3日以上の期間を確保するのは難しいけれども、移動に時間がかからないところなら楽しめる。というわけで、ますます国内旅行が多くなりそう。なにしろ4~5日間の海外旅行ばっかりしていて、国内の近場を2~3日間で楽しむことが今まであまりなかったのだ。ちょうどいい機会じゃありませんか(笑)。

秋の紅葉シーズンに、またも急に思い立ち、袋田の滝(茨城県)が見てみたくなったり、今年の紅葉は12月上旬まで見られるという話を聞いて、「そうだ、京都へ行こう…」と、ひとりで出かけてしまった。私の旅はいつもイキナリなので、つい「ひとり」になっちゃうのだなぁ(苦笑)。

しかも、前もってガイドブックとかをあまり見ない方なので、いつも現地に着いてから観光案内所を探して、そこで初めていろいろなことを知るのだけれども、ひょっとしてこれは現地に着いてからの労力が意外と大きかったのかも。病人のくせに「行き当たりばったり」型の旅行をするなんて、今まで無事だったからいいけれども、これからは旅行のスタイル・スタンスをちょっと変えないといけないかな~と弱気になってみたりもする。

外見上は顔色が土色(病的な褐色らしい)という以外、見た目ではわからない上、自覚症状に乏しい私は、秋の旅から「血圧計」というアイテムを1つ増やした。自分で感じられないものを、目に見える形にするために。ちょっと下品な言い方をすれば、「へっへっへっ、口では平気と言っているけれども、体は正直だなぁ~」というわけだ(笑)。それだけで決めてしまうわけではないけれども、判断材料の1つになるのでは?と考えたのだ。私の場合、それは旅に限らず、健康管理をする上で、あると便利なものなので購入を決めた。病気が原因で、起きているといつも微熱症状が現れてしまう特徴がある私は、体温計だけで判断してしまうと、ずっと寝たきりになってしまう。そうなると、旅どころか、働くこともできないし、外を出歩くこともできない。熱があるなら休め!と言われても、それが常なんだな私の体は(^_^;)。

病人である私が旅行したいと思う限り、旅行は続けることができるはず。少々面倒くさいことでも苦にならなければ快適なんだろうな。私が今までの旅行スタイル・スタンスを変えるといっても、野宿は絶対に避けようとか、深夜バスでの連続移動はやめようとか、そんな程度のことです(笑)。本質は全然変わらないけれども、形が今までと違うだけ。私の場合、体にキツイことさえしなければ大丈夫。でもこれって、病人じゃなくてもよくいわれていること。いわゆる健常者よりも許容範囲を狭くするというか、グレーゾーン(あいまい部分)をはっきりさせればいいのかな。ある目安に対して、これ以上は絶対にやらないと「厳しく」なれればいいのだろうな。

たとえば、「無理をするな」と言われて、それは「無理じゃない」と判断したが、やはりそれは「無理だった」とか、逆に「無理じゃなかった」とか、そういうのはありそうだ。実際、「結果オーライ」の積み重ねが自信につながったり、それが正しいと信じてしまったり。それは間違いじゃないのだけれども、そういった身につけた「感覚」だけでは心もとない。それが確かなものかはわからないけれども、やはり「結果」は重要。極端な話、「大丈夫だと思った」けれども、「死んじゃいました」では困るのだな、マジで(笑)。

人はどんな環境でも適応する能力を持っている。もちろん、それは変幻自在とはいかないけれども、冷静になって対処すれば、その時々の最良と思われる方法が見つかるんじゃないのかな。私は欲張りなので、どちらかを選ばず全部取ることも。でも、その程度はささやかなものになりますけどね。血圧計持参の旅はまだ始まったばかり。そのうち自分でシリンダーと注射針を持ち歩く、怪しい旅人を目指そうかな(笑)。

<2000年3月掲載>